凸森の思弁的卵かけごはん

アニメ/マンガ/本/音楽/映画/グルメetc...エンタメ関連を中心に、日々の徒然を綴るブログです。

少女が少女に恋をするその”刹那”に、僕は恋をする。

 『魔法少女リリカルなのは』この物語は明らかにフェイトという一人の少女がなのはという少女に恋に落ちる過程の美しさ、それが全てでなくて他に何があろう?
 最初の邂逅、彼女達は共通のサブジェクトを異なるレゾンで奪い合う敵であった。いや、「敵」という言葉はこの文脈において野蛮である。「他者」だ。この他者間で否応がなしに生じてしまうのは「コミュニケーションの不和」。フェイトにはなのはという親和的他者に対して、どう振る舞えばいいか分からない。何故なら彼女のレゾン・デートルは「母」であり、「母に愛されたい」、その一心のみで彼女は行動する。しかし、彼女に対して母は冷徹であった。母はフェイトの事を自分の目的の為に利用するツールとしてしか、彼女と向き合わない。繰り返される虐待。しかし、彼女はその螺旋から逃れる方法を知らない。フェイトはそれを自分のフェイト(運命)としてそれを受け入れるしかなかった。
 そんな「悲しい目をした優しい女の子」をなのはは見過ごせなかった。何度も彼女の名前を呼ぶ。しかし、それは彼女には届かない。コミュニケーションはいつも成立し得ず、平行線を辿るのみであった。
 しかし、身を挺してまでフェイトと向き合うなのはに、フェイトは困惑し苦悩する。
   「どうしてあの子は私の名前を呼んでくれるの?」 
 そして母に愛が無い事を知り、フェイトはショックのあまり昏睡する。その闇の中、彼女は自分の名前を呼ぶひとりの女の子の声がしたような気がした。そして目を覚ました時、彼女は母の桎梏を振り払い、名前を呼ぶ。
   「なのは....」
 最後の橋の上での再開シーン。なのはの恋は成就した。
「溢れる水は漱石的存在に異性との遭遇の場を提供する。しかも、そこで身近に相手を確認しあう男女は、水の横溢によって外界から完全に遮断されてしまっているかにみえる。」
蓮實重彦『夏目漱石論』より
 テレビアニメでありアニメーション的には決して「素晴らしい映像」とは言えないかもしれないが、僕はそのシーンを素晴らしいと思わざるを得ない。


 さて、長々と話してしまったが、僕が言いたい事はアニメ界において物語は「ボーイ・ミーツ・ガール」から「ガール・ミーツ・ガール」へと移動しているという事である。
 それを巷では「百合」と呼んでいるそうだ。
 例えば、女の子同士が友達以上恋人未満のような関係性で和気あいあいとしている物語。『けいおん!』『ゆるゆり』『ひだまりスケッチ』『らき☆すた』『Aチャンネル』『キルミーベイベー』、、、枚挙にいとまがない。
 「じゃあお前は女の子同士が和気あいあいとしているのが見られればそれでいいのか?」
 いや、それだけではない(まぁそれだけでもいいのだが笑)。ここで重要なのは「他者に出会う」という事である。
 最初からある女の子同士がコミュニケーションを取れているようなお話であれば、僕のツボには入るかもしれないけれど、僕の琴線に触れることはない。琴線を揺るがせるものは「わかりあえていなかった他者同士がわかりあう」である。
 従って、ただ単に「百合」を標榜された所でそれを全て「素晴らしい」と僕は言わない。「わかりあえていなかった他者同士がわかりあう」コミュニケーションの不和が親和に変わる時、つまり少女と少女が恋をする時、僕はそれを「美しい」と呼ぶ。
  「じゃあ男同士じゃダメなのか?」
 僕は女の子が好きだからちょっと受け入れられないかな....笑
 しかし、僕が思うにここで重要なのは「少女の処女性・純粋さの中にある葛藤」だと思う。その事が少女達の出会いが最高の純度を有しているのではないか?では「少年の童貞性・純粋さの中にある葛藤」の中での出会いはどうなのか?だが少年の場合、その純粋さはのちに「父を憎み、母を愛す」に還元されるような気がする。...申し訳ないがここら辺の論を固めるにはもう少し考察と読書が必要になる。
 
 ともあれ『魔法少女リリカルなのは』のフェイトとなのは。『けいおん!』で言えば、唯と梓(彼女達は違う学年で「出会い」が発生し、考え方も違うがわかりあっていくというプロセスがある)。彼女たちは恋をするのだ。

 「少女と少女の恋」の網を張り巡らせ我々に反復的にその恋を魅せる作品が存在する。それが『魔法少女まどか☆マギカ』である。
 まどかの巴マミとの出会い(第2話のBパート、まどか「こわいけど...でも」と言うシーンが明らかに恋に落ちた様に僕には見える)、さやかと杏子の相反する正義の出会い、まどかとほむらの出会い(まるでほむらは「火星からきた男」ようだ)。
 少女達の恋が効果的に、反復的に展開される『魔法少女まどか☆マギカ』この作品が僕にとって最高作品でなくて他に何があろう?
 魔法少女達の恋する刹那に、僕は恋をした。