宇宙の水
「今日は宇宙から水が降ってきたような日でした」
今日という日を"一言日記"にしてみると、大体そんな感じだ。
地球という器の中にある水が宇宙から大量の水が降り注いで我々の生活する大地に流れ込んでくるような、極大な増幅。地球という規模で考えている僕らからは考えられない、別次元からの訪れ。
人間の感情。
ボクハ、アナタノコトガスキデス
ボクハ、アナタノコトヲニクンデイマス
それはどこから来るのだろう?
どうしてそれは無限に肥大化し、そしてある日に消えてしまうのだろう?
僕は"別次元"という言葉を使わないと説明がつかない。
ある女の子。
彼女はみんなから慕われていた。
だがあるきっかけでみんなを無視するようになった。
そんな話を聞いた。
誰かを無視するということ、誰かから無視されるということ、
「とにかくアイツはひどいやつだ。うぬぼれてるし、へんてこな話し方だし、スノッブだし、それにーーーレイシストだ」
昨日あんなに仲良さそうに話していたのに、、、
僕は宇宙的な感情の増幅を感じずにはいられない(確かキュウべぇがそんなこと言っていたね)
「わたしはあなたに対して悪い感情を抱いているわけではないのよ。でも、これはわたしの問題。正確に言えば、わたしの"状況"の問題。今わたしがあなたと一緒になることを正しいと呼べる状況ではないの。そういうの、わかる?」
あぁ、なんとなくわかっていた。
お互いが形而上的に"好意"と呼べる何かを感じていたとしても、だからといって必然的に形而下に繋がっていい理由にはならない。それは痛い程よくわかっていた。
「鳥は自分が鳥だとは考えない。鳥は自分が飛ぼうと思って飛んでいるわけではない。"ただ"飛んでいるんだ。しかし、僕らは自分を自分だと考えている。僕らは飛べないと思って飛ばないわけではない。飛びたいと願い、そして飛べないんだ。つまり、、、、そういうことだね?」
中野の夜道をぐるぐると回りながら僕は受話器越しにそうつぶやいた。
「そうね。そういう言い方もできるわ。問題は、、、」
「みんながみんな、同じような考え方をしないということ」
「そういうことよ」
感情は増幅する。それは僕たち、わたしたちが理解できないところで、別次元的な力で、増幅し反転する。
しかし、すべての感情がそのように出来ている訳ではない。
誰も知らない湖に、雨水が少しずつたまっていくような、そんな感情だって存在する。
「でも不思議だ。きみに何度拒まれたとしても、僕はきみのことが好きなんだ。これって、ビョーキかな?」
彼女は答える。
「えぇ、ビョーキよ。それもかなり不幸で、救われない種類のね」
宇宙のせいに、したくはないんだ。